数百年前の建物をお店やホテル、一般住居としてもふつうに使っているイタリアでは、
修復作業やメンテナンス中のビルや教会、公園なんかによく出会う。
ローマのスペイン広場上にそびえたつ教会は2年以上前からずっと修復中だし、
ミラノのドゥオモも広場に面した正面はシートに覆われている。
イタリアの建造物は、いくら風化しにくい石でつくられているからといって、
近頃は酸性雨だってふるし、オゾン層が破壊されて紫外線もつよい。
ものすごい数のバイクや車は白い建物を真っ黒にするのに充分な量の廃棄ガスを吐き出している。
そんなきびしい現代に残された建造物たちは、原型をゆがまされるのを最小限におさえるために
ちょくちょくメンテナンスしてあげないといけないのは当たり前だし、
しかたないといえばしかたないのだけど、やっぱりどこか残念に思ってしまうのもホントのところ。
そんなとき、たまに目にするのが、作業中の建物をおおう注意書きやら
なんのヘンテツもない白いシートの代わりにその建物の写真を描いたシート。
実物大のアイドルのポスターが実物大にはどうも思えないように、
遠近を把握する能力に長けた目をもっている人間には、
彫刻や模様、レトロな窓枠などで埋め尽くされた街の中に突然ある「平面」は返って目に付く。
遠くから見ても、実物とまちがうことはまずなくて、写真だな」ってすぐわかるんだけれど、
この遠くからみても、わかるぐらいのモンがわたしは大好きなのだ。
「景観をこわさないように工夫しているんだなぁ」とただ感心するよりも
「お!やるじゃん、イタリア!」って思いの他テンションが上がってしまうのは
きっとわたしだけじゃないはず。
今しか見れない貴重で特別なモノを見たような、
ちょっと得した気持ちにさえさせてしまうワザ、やっぱりやるなぁ、イタリア。