3. 大好き☆ダイニング

ゆったりとしたつくりのヴィンチェの家には、
もちろん立派なソファやテレビもあるリビングもちゃーんとあるんだけど、
玄関を入って、真正面奥のキッチンの手前にあるダイニングスペースが
わたしの一番のお気に入りの場所。

キッチンとダイニングの境目になっているちょっとしたカウンタにほお杖をついて、
キッチン側に顔を出せば、料理をするパオラの手元まで見える。

アーティチョークの皮をどこまでむくのかとか、いちいち「へぇ〜」ってなるし、
野菜をていねいに洗ったり、包丁をいろんな角度にかまえてこまかくきざんだり、
ひとつひとつの動作がゆったり落ち着きはらっているパオラ料理風景をながめるだけで
自分もスローダウンしてくる。

ちなみにこのカウンタは、毎朝、人数分のカプチーノを作ったり、
カテリーナの着替えやごはんでキッチンを離れなければならなくなったパオラをたすけて
パスタをゆでるヴィンチェに「あの子は結婚して離婚して、この間また結婚したんだよ〜」
なんていうムダ話をしかけるのもちょーどいい距離感なのです。

そんなダイニングにある、大きな天然木のテーブルは、
一日のうちに一定の時間になると小さくてしあわせな変化が起こる。

窓や扉を通した外の風景やカウンターからのキッチンの様子にしばらく気をとられて、
ふとダイニングテーブルを見ると、いつの間にか真っ白なテーブルクロスがかかっていたり、
真っ白なナプキンが人数分おいてあったり、小さくてしあわせな変化が起こりだす。

変化をはじめたダイニングテーブルは、次に見ると、ナイフとフォークが追加されていたり、
その次に振り返ると、ブルーと白のお皿が整然とならべられていたりする。

テーブルセッティングをするのは、たいていヴィンチェなんだけど、
なぜか、わたしはヴィンチェのテーブルセッティングに動く姿をほとんどみたことがなくて、
ほんとにいつも魔法のように、ダイニングテーブルを見るたびに1品ずつアイテムが追加されて
パオラの料理を最高の状態でむかえる空気をつくっているように見える。

次のたのしい食事シーンを頭がイメージするのか
子どものときに帰宅するとカレーだったときのような単純な気持ちで、
ただしあわせで、うれしくなってしまう。

そんなダイニングがわたしはどうしようもなく好きなのです。