ずぼらでがさつでちょっとせっかちを充分自覚しているわたしにとって、
パオラのキッチンはどうしようもなくステキで、自分の「雑さ」を反省するいい機会になります。
もちろん、イタリアではイタリア製のキッチンウェアがカンタンに手に入るし、ごく一般的なコンロを操作するための表示がかわいいアイコンだったりするし、朝食のパンをいれたベーカリーの袋がそれだけで様になっていたりするので、パオラの状況は機能性重視の日本に住むわたしよりもかなり有利。
でも、そんなハンデを負っているということを考慮しても、学ぶことは本当にたくさんあります。
まず、その適度な生活感。
モデルルームみたいに全く人の気配がしないというわけでもなく、
生活臭がただよったり、所帯じみた雰囲気もない、まさに「ちょうどいい」生活感がそこにあるのです。
ここちよい空間のために、エスプレッソマシーンやカプチーノカップなど、ひとつひとつのキッチンツールの見え方を考えながら、ディスプレイしている風景がうかびます。
たとえば、シンクのそばにかかった食器用のクロスは、生地の素材も色もステキだし、コンロの前にぶらさがったおたまやフライ返したちも、ちょうどいい生活感をかもしだすツールになっています。
「このキッチンクロス、すてきだねぇ〜」
パオラに代わって、ランチを準備しているVinceに声をかけながら手に取ると、
そこには同じ素材の生地でとってもかわいい貝のアップリケが!
「うわぁ〜!かわいい♪」
きくと、クロスに穴があいてしまった部分を補修するために、パオラが別の生地を縫い付けたそう。
感心しながら、ストライプのキッチンクロスをまじまじと観察すると、
丁寧に切り取られた貝の模様の部分の生地を、これまた丁寧なステッチでぬいつけられています。
さすが、パオラ。
気負わず、まったく自然体なのにスローライフが溶け込んでいます。
ふと、クロスを裏返すと、なんと裏側にも貝のアップリケ!
しかも、クロスの裏側のアップリケは、貝の生地も裏側!!!
もしかしたら、捨てられる運命もあったこのキッチンクロスは、
パオラからのたっぷりの愛情で、こんなにかわいく、しかも裏側まで丁寧にアレンジしてもらって、
新品だったころよりも、もっとステキになっているはず。
そして、どんなものにも細やかな気をくばれるパオラにとって、
古くなったものでもステキに使えるように考えるのはきっと楽しい作業なんだろうなぁ、
と、どうもがさつな自分を反省するのでした・・・